ウポポイ(民族共生象徴空間)について考えよう

アイヌ政策検討市民会議のシンポジウム

ウポポイ(民族共生象徴空間)について考えよう

とき 2020年8月2日(日曜)13:15~15:45

会場 札幌市教育文化会館・4階講堂

札幌市中央区北1条西13丁目

入場料 500円

主催 アイヌ政策検討市民会議

http://ainupolicy.jimdo.com

お問い合わせ ☎011-252-6752(さっぽろ自由学校「遊」内)

 

スピーカー/パネリスト

川村久恵さん 川村カ子トアイヌ記念館副館長

田澤 守さん 樺太アイヌ(エンチウ)協会会長

清水裕二さん コタンの会会長

ジェフ・ゲーマンさん 北海道大学教授

丸山博さん アイヌ政策検討市民会議代表 


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ジェフ・ゲーマン「ウポポイについて考えよう」配布資料
20200802upopoy_gayman_1.pdf
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ジェフ・ゲーマン「ウポポイについて考えよう」(スライド)
20200802upopoy_gayman_2.pdf
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丸山博「ウポポイとは何か」スライド  Hiroshi MARUYAMA "What is Upopoy?" slide
2-august-2020-sapporo-latest-version.pdf
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「ウポポイについて考えよう」シンポジュウムの開催にあたっての問題意識

 

2020年8月2日 アイヌ政策検討市民会議 運営委員会

 

「ウポポイ」は政府が白老ポロトコタンに建設した「民族共生象徴空間」と名付けられた施設です。

 

パンフレットによりますと、「ウポポイ」の施設は、国立アイヌ民族博物館・体験学習のできる施設・屋外ステージ・伝統的コタンのチセ(家)と、これらの施設から1.2km離れた所に「慰霊施設」があります。最後の慰霊施設というのは、なぜか公式パンフにもホームページにもわずかな説明しかありませんが、学問研究の名のもとにコタンの墓地から盗掘され、全国の大学に保管されてきたアイヌの遺骨を集めた施設です。

 

国立アイヌ民族博物館は「先住民族アイヌを主題として、アイヌ民族の誇りが尊重される社会をめざし、多くの人にアイヌの歴史や文化を伝え、アイヌ文化を未来につなげていくこと」を目的とすると、パンフレットに書いてあります。

 

博物館は6つのテーマでアイヌの歴史・文化・現代を生きるアイヌ民族の方たちの紹介をしています。これらの館内展示説明の主語は「わたしたち」で、アイヌ民族自らアイヌ語で語る形式をとり、地域によって異なる言葉に配慮して語り手の名前と地域名を明らかにしています。展示の解説について第一言語をアイヌ語とし、日本語を第二言語とする国立施設ができたことは画期的だといえます。

 

しかし、歴史の説明において、アイヌ民族が、明治政府によって土地を全て奪われ、住むに適さない荒れ地に移住させられて窮乏し、主食であった山や川での鹿猟や鮭漁を禁じられて多くの死者を出して人口が減っていったこと、アイヌ語とアイヌ文化を禁じられたために、現在もアイヌ民族がアイヌ語を語って暮らすことができないという最も重要な問題が完全に抜け落ちています。さらに、アイヌ民族は人類学者の研究対象とされ、屈辱的な身体の計測や血液の採取、そして墓地に葬られていた遺体と副葬品の大規模で長期間にわたる盗掘が国家の主導によって行われたことにも触れていません。

 

つまり、アイヌ民族が「北海道開拓」という名の国家による植民地政策によって人間としての権利を奪われたことについての解説はまったく存在しないのです。

 

現在、多くの日本人はアイヌ民族についてよくわかっていません。植民地支配による同化政策はアイヌの言葉も文化も禁止し、学校で社会で差別やいじめがある中で、アイヌが自らアイヌであるとなのりでることには大きな勇気が必要だったからです。日本政府は昨年の「アイヌ施策推進法」で初めてアイヌの人々を先住民族と認めましたが、国家の植民地政策が民族の窮乏と文化喪失の原因であることを認めるどころか、ごまかそうとしているのが実態です。

 

国立アイヌ民族博物館では、アイヌ民族が日本列島で和人と隣り合って長い歴史を生きてきた民族であることを知らせ、映像で現在活躍しているアイヌ民族の調理師や俳優、工芸家など多くの職業についている人々を紹介しています。また、明治以来152年にわたって変わらぬ植民地政策が続いている日本の、厳しい差別の中でアイヌ文化を守り伝え創造し続けた人々、民族の権利回復を訴え続けた人々を紹介しています。アイヌ民族のこうした長い闘いが続いてきたからこそ、今回の展示で多くのアイヌ民族の方々が実名でご自身の活動や作品などを公表されるようになっていると思います。

 

博物館により、今日を生きるアイヌ民族の存在を多くの人々が知ることができ、言葉と文化と歴史の一端に出会える場ができたことは良いことです。

 

しかし、アイヌ民族の尊厳と権利回復の視点から見た時、国家の冷酷な植民地支配による収奪についての事実認識と謝罪が存在しない「共生」はありえません。また、「慰霊施設」はアイヌ遺骨の盗掘をした各大学の責任を曖昧にし、これからもアイヌ民族の了解なしに研究を続けることを可能にしています。「ウポポイ」は「民族共生」のスタートラインにすら至っていないことを私たちは忘れてはならないと考えます。

 

このウポポイについて、様々な角度から検討するために今日は5人の方々から意見を伺い、アイヌ遺骨の再埋葬の映画を見たうえで、さらに議論をして、理解を深める場にしたいと思います。