チ カラ ニサッタ〜我らつくる明日〜

有識者懇談会への提言

前文

 

 私たち「チ カラ ニサッタ ~我らつくる明日~」は、アイヌ民族の権利回復に関心を向けるアイヌ民族を含む多様な民族からなる草の根の市民グループです。私たちは、アイヌ民族の先住民族としての権利の回復が、この日本という社会において私たち一人ひとりが互いを尊重しあいながら親和して生きる関係を築いていくうえで、必要不可欠の課題であると考えており、その実現のために努力することを目的としています。

 

 日本政府は「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(以下「宣言」と略す)の採択を背景に、2008年6月6日の「アイヌ民族を先住民族とすることを求める」国会決議を受けて、アイヌ民族を日本国の先住民族として認知し、それに伴う法制度や施策について提言する有識者懇談会を設置しました。私たちは、これらの動きがアイヌ民族の権利回復の真の実現に向けた歴史的転換となることを願っており、有識者懇談会より提出が予定されている政府への提言に大きく注目するとともに、私たち草の根の市民の声がそこに反映されることを願って、この提言をまとめました。

 

 アイヌ民族に対する明治政府発足以来の政策は、それまでの土地や海や川の、私的所有によらない利用権、慣習法上の権利を、交渉も同意もなく取り上げて先住民族の権利を侵害しました。また、独自の言語であるアイヌ語を使用する権利を抑圧し、適者生存・優勝劣敗の論理に立って、多数者国民への同化を強制し、民族としてのアイデンティティの消滅を図りました。

 新しい法の制定や政策の策定にあたっては、その歴史を直視し、過去の政策が間違いであったと宣言し、その政策によって被害を受け、損害をこうむったアイヌ民族に対して謝罪することが必要です。

 謝罪は、日本国が正義を実現するという態度の表明を意味します。私たちのうち日本国家の構成員である多数者は、自分たちをさておいて国に謝罪せよというのではありません。多数者に属する私たち一人ひとりが、過去の歴史を見つめ、反省し、謝罪する意志を持たなければならないと思っています。ですから国が私たちを代表して謝罪することを求めます。また、謝罪は、歴史への反省を国民にうながす教育的な意味を持っています。多くの日本国民は、アイヌ民族がこうむった苦難の歴史を学んでいません。国の謝罪は、国民にアイヌ民族への認識を改めるよううながします。国民として、日本社会の市民として、持つべき健全な良識を育てるために、ぜひ公式な謝罪を行ってください。

 

 「宣言」に述べられている先住民族の権利は、すべての先住民族に保障されるべき「最低限度の基準」(「宣言」第43条)であり、そのすべての条項がアイヌ民族に対しても保障されなければなりません。これらの権利はまた、先住民族のみに特別に与えられた権利ではなく、あらゆる民族に保障されるべき権利に他なりません。日本国は、その政策によって、アイヌ民族が元々もっていたそれらの諸権利を侵害してきた歴史的事実を認めるとともに、それらの侵害された諸権利の回復に尽力する責任があります。アイヌ民族に対する新たな政策は、アイヌ民族の「自己決定の権利」(「宣言」第3条)に基づきながら、アイヌ民族が、集団としても個人としても、他の民族及び個人と差別なく真に平等な関係がつくられること(「宣言」第2条)を目指したものでなければなりません。

 

 以下に、私たちが話し合いの中で特に実現を求めたいと考えた具体的内容を記します。

 

(以下略)

 

「チ カラ ニサッタ〜我らつくる明日〜」有識者懇談会への提言(2009年)

全文はこちらをどうぞ。http://www.douhoku.org/ainu/yukon_teigen.pdf