アイヌ施策推進法見直しに関する要請

2025年11月25日

 

内閣府 大臣官房 アイヌ施策推進室御中

 

アイヌ政策検討市民会議

代表 ジェフ・ゲーマン

私たちアイヌ政策検討市民会議(以下「市民会議」)は、政府の進めるアイヌ施策を市民の立場から検証し、提言するため2016年から活動している、アイヌ民族、研究者、市民らでつくる非営利の市民団体です。

 

2019年5月に施行されたいわゆるアイヌ施策推進法(以下「推進法」)が5年を経て見直しの時期を迎えていることを受け、私たちは11月1日、アイヌ民族を中心に活動している少数民族懇談会(同「少数懇」)、ラポロアイヌネーション(同ラポロ)、シベチャリ・アイヌトライブ(同「シベチャリ」)の協力を得て、札幌市内で「みんなでチェック! 日本の先住民族政策」というタイトルの集会を開催し、上記団体以外のアイヌの人々やオンラインでの視聴を含め、80人近くが参加しました。

 

集会では、市民会議、少数懇、ラポロ・シベチャリが、それぞれにまとめ、公表している見直し提案(各提案の全文は別紙をご覧ください)を基に、①土地・資源に対する権利②謝罪と補償③自己決定権④差別禁止⑤遺骨返還⑥年金・教育・厚生福祉-という、各提案に共通する重要6項目を中心に報告をいただき、意見交換しました。

 

まず①の「土地・資源に対する権利」に関してですが、そもそもアイヌの土地・資源が和人の手に渡ったのか、という根源的かつ決定的な問題の指摘に加え、推進法にバトンを渡し、役目を終えたアイヌ文化振興法が振興・発展を期したいわゆるアイヌ文化がサケ漁などの生業に根差して形成され、受け継がれてきたものであり、生業の復活と切り離しては本当のアイヌ文化振興はあり得ない、との指摘が相次ぎ、そうした面からも、推進法の見直しにあたって生業の前提となる土地・資源への権利を盛り込むことは必須だ、との意見が相次ぎました。

 

②の「謝罪と補償」に関しては、①とも関連し、まず先住民族に対する歴史的な不正義に対する国としての正式な謝罪があるべきだし、そうした流れは今、世界的に広がっている、という認識を共有。③の「自己決定権」に関しては、そもそも推進法に基づく関連事業推進主体がアイヌ民族ではなく市町村となっているという問題点を確認し、地域での文化財等に関する取り扱いについてもアイヌ民族の意思が尊重される仕組み作りが必要だ、との指摘も出されました。⑤の「遺骨返還」については、人間の尊厳という意味で極めて重要であるにもかかわらず推進法に一切、言及がないなど国の認識の不足が明白になっているとして、アイヌの意に反して持ち去られた遺骨の返還を国の責務と確認すること、地域返還にあたって、持ち去られた側のアイヌに対し受け入れのための条件整備を求めるなどの問題が指摘されている現状の返還ガイドラインの見直しが急務だ、との訴えがありました。⑥の「年金・教育・厚生福祉」については、学校教育、社会教育を通じて正しい歴史を伝えること、世代を超えて続く弊害の解消に向けた施策を求めることなどの必要性が指摘されました。

 

④の「差別禁止」に関しては、アイヌ民族の先住性を否定し、明治以降の同化政策を正当化する歴史観を前面に打ち出したパネル展が9月に札幌市の地下歩行空間で行われたことを受けて別枠で論議。「アイヌの史実を学ぼう!」と題した問題のパネル展の内容がいかに史実から懸け離れた内容であるかを確認し、差別を禁じる推進法4条の規定があるにもかかわらず、こうした、歴史認識に名を借りた新しい差別が公共の場で流布される現状に対し、実効ある新たな措置の必要性を共有しました。

 

また、こうした見直しの内容に加え、アイヌの人々の意見を吸い上げるために各地で開かれている意見交換会について、他の地域でどんな意見が出たのかなど交換会の成果がアイヌの側に還元されない、このためどんな意見が見直しに反映され、どんな意見が反映されなかったのか検証できないといった、見直しの進め方の問題点も明らかになりました。これ自体がアイヌ民族の自己決定権に関わる重要な問題であり、各地の意見交換会の内容は極力、アイヌの人々に公開され、共有されるべきです。一方で、どの課題も、簡単に実現できるものではないが重要な課題であり、今後は実現にむけた行動について議論していきたい、という力強い呼びかけもありました。

 

集会では、差別され抑圧されてきた先住民族が本当に尊厳を回復するためには、これらの課題の解決が急務であり、そのためにはこうした当事者の提案に沿った推進法の見直しが不可欠だ、という認識で一致していたと考えています。ぜひこの集会の参加者一同の思いを受け止め、見直しの検討状況に関する情報の公開に取り組み、当事者であるアイヌの人々が心から歓迎できる見直しが実施されるよう強く要請します。