第51回衆議院議員選挙に関するアイヌ政策検討市民会議声明
アイヌ政策検討市民会議
代表 ジェフ・ゲーマン
〒060-0061 札幌市中央区南1条西5丁目
愛生舘ビル5F 501 さっぽろ自由学校「遊」気付
衆院選が1月27日、公示されました。私たちアイヌ政策検討市民会議は、アイヌ民族および多文化共生社会を目指す市民の立場から政府のアイヌ民族政策を検討しており、2025年から26年にかけての、アイヌ施策推進法見直しを進めるはずのタイミングでの、政策論議を置き去りにした政局優先の解散を遺憾に思います。また、この選挙で、アイヌ民族に対する、誤りと悪意に満ちた発信を続ける候補がまたも政党の公認を受けて出馬していることに強く抗議し、有権者市民の皆さんに、先住民族が尊厳を取り戻し、この国に暮らす、多様なルーツを持つ人々がそれぞれのアイデンティティを尊重される社会に向けた投票行動をとるよう呼びかけます。
現在のアイヌ民族政策の根拠となるアイヌ施策推進法は附則で、施行から5年後に見直しを行い、必要な措置を取る、とされていました。アイヌ民族や関係者からはこの法について、「先住民族の権利に関する国連宣言(UNDRIP2007)」など国際水準に比べ、先住権の回復や差別に対する実効性のある抑制・禁止策など不十分な点が多い、との声が多く出されていましたが、黄川田仁志国務大臣は昨年12月、札幌市内で開催されたアイヌ政策推進会議の席上、法改正はしない、との方針を表明しました。解散は、政権の枠組みを国民に問う、という意義付けではありますが、この法改正せず、という方針に関して行われるべき国会質疑を不可能にしてしまった、つまり政策より政局を優先した判断であり、残念と言わざるを得ません。
さらに、各党から出馬する顔ぶれを見ると、アイヌ民族や在日コリアンに対する人権侵犯を法務局によって認定された杉田水脈氏、アイヌヘイト発言を繰り返す小野寺秀氏ら、多文化共生とは相いれない考えの候補が散見されます。杉田氏は今もなお、自分は差別を利用して不当な要求をする人たちと戦っているのだと主張し、アイヌ差別に対する告発が利権目当てだと言わんばかりの自己弁護を繰り返しています。小野寺氏が繰り返すアイヌ先住民族否定論は、日本人類学会・日本考古学協会・日本文化人類学会が昨年12月に出した3学協会共同会長声明で、アイヌ民族が、日本が近代国家を形成する過程で差別にさらされながら今もなおアイデンティティや独自の文化を継承しつつ続いている「アイヌ民族の暮らしをふたたび脅かし、共生の理念を否定する言動」として警鐘を鳴らしている、まさにそうした類のヘイトです。候補本人に加え、こうした候補を擁立することでヘイトに加担する政党に対し、私たちは強く抗議します。
個別の候補に限らず、政党の政策に関しても、多くの懸念があります。この国には、先住民族だけでなく、植民地支配・侵略戦争の過程でこの領域での生活を余儀なくされた人々、その後の国際的な社会・経済情勢の中で移り住んできた人々など多様なルーツを持った人々が暮らし、社会を支えています。しかし、各政党の公約には、移民が税制や社会福祉で不当な利益を得ているとか、治安悪化を招いているとか、この国のさまざまな問題の責任を、誤った認識に基づき根拠もないまま、海外にルーツを持つ人々に押し付ける排外的な主張が目立ちます。こうした主張は、独自のアイデンティティを保ちながらこの社会に暮らす少数者集団に対する不当な敵視につながり、国策によって言語や生活様式を奪われ、困窮しながらも独自の文化を継承しようと努力を続けている先住民族などに対するヘイト、過去の同化政策の正当化を招く、危険なものだと考えます。
グローバル化し、人・モノが国境を越えて行き来するようになった現在、先住民族の権利と尊厳の回復を通じて過去の植民地主義から脱却し、新たにこの国の領域に来た人たちも対等に扱う多文化共生の社会を目指すのか、過去の同化政策を正当化し、今後も多様性を認めない社会とするのか。今回の選挙では、この国がどちらに向かうべきかが問われる選挙とも言えるでしょう。私たちは2月8日の投票日に向け、有権者の皆さんがこの点を踏まえ、一見美しい言葉に満ちた公約だけでなく、各政党や候補の過去の言動も考慮しながら投票されるよう呼びかけます。
