差別発言放映の原因究明と再発防止策の徹底を求めます

2021年3月15日

 

日本テレビ代表取締役会長執行役員大久保好男様

STVテレビ代表取締役社長根岸豊明様

 

差別発言放映の原因究明と再発防止策の徹底を求めます

 

アイヌ政策検討市民会議(代表 丸山 博)

 

3月12日、貴社の情報番組で放映されたアイヌに対する重大な差別発言は看過できません。しかも、一個人が番組の進行中に突発的に発したものではなく、事前に収録されていた発言を放映した以上、貴社には今回の差別発言のチェックを怠り、放映した責任が厳しく問われます。差別発言に対する真摯な謝罪は大切です。しかし、謝罪だけに矮小化される問題ではありません。なぜ、このようなことが起きたのか、差別発言が差別される側、あるいはネット上の差別する側にどのような影響を与えたのか、さらに今後このような事態を繰り返さないためにはどうすればいいのかといったことなどについて調査し、公共言論空間を形成するメディアとして、今後のあるべき姿を再構築すべきだと考えます。

 

997年、国連の人種差別撤廃委員会は、先住民族の権利に関する文書(General Recommendation23)において、締約国に対し、五つの事項の履行を求めています。1)先住民族の独自の文化、歴史、言語、生活様式を認め、敬意を払い、それらの維持を促進すること、2)先住民族を理由に差別を受けないよう保証すること、3)先住民族が文化的特性を踏まえた経済的社会的発展を持続的に行うことのできる条件を整備すること、(4)先住民族の権利や利益に直接関係する決定には彼ら彼女らに十分な情報を与えた上での同意が不可欠であることを保証すること、(5)先住民族社会が文化的伝統や慣行を実践再生し、言語を保存し使用する権利を有することを保証すること。なお、人種差別撤廃委員会は、法的拘束力を有する人種差別撤廃条約を日本を含む締約国が遵守し、それに沿って国内法を整備する義務を果たしているかどうかをモニタリングするために設けられた機関です。

 

日本は他の先進諸国に比べて、上記の五つの事項の履行には程遠い段階にあります。貴社を含むメディアは、主権在民と人権擁護という民主主義の大前提に立って政府を監視する役目があり、上記の国際文書の履行を政府に迫っていかなければならないことを自覚してほしいと思います。今日、世界を見ると、米国に始まったブラック・ライブズ・マター運動は世界各地で共感をもって受け止められ、多くの市民が人種差別の撤廃のために立ち上がっています。それはまた人種差別の根幹にある植民地主義への批判へと向かっています。それを日本に当てはめれば、北海道の開拓を日本の近代化としてとらえてきた従来の進歩史観を北海道の植民地化という新たな歴史観へと変えていくことを意味します。

 

今回の貴社の差別発言の放映は、国連の人種差別撤廃条約の求める先住民族の権利の保障のみならず、世界の市民の人種差別撤廃や進歩史観の見直しの取り組みに逆行するものであり、到底容認できるものではありません。公共言論空間を形成するメディアとして、今回の差別発言への原因究明と今後の再発防止策の策定、実行を求めます。

 

 

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