アイヌ施策推進法見直しに向けて(提言)

「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法、2019)の施行から5年後に当たる2024年5月の法律見直しに向けて、アイヌ政策検討市民会議はこのほど提言をまとめ、2024年4月20日、札幌で開いた「アイヌの声を国会に!  アイヌ施策推進法の“作り直し”を求める集会」で公表しました。全文を掲載します。(2024/04/21)


アイヌ民族の声 市民会議アンケート調査への回答から

関連条文 1・3・5・7条 

  • 「アイヌモシリを返せという非現実的な事を言うつもりはないが、アイヌがたどらされてきた歴史を振り返り、想像力をもって対処してほしい」
  • 「樺太アイヌ(エンチウ)はいまだに国に認めてもらっていない。無かったことにしているのは許せない」「自己決定権や土地・資源の権利などがない先住民族では、絵に描いた餅である」
  • 「自己決定権を堅持し、あらゆる先住権を認め、先住権を保障すべき」
  • 「現実的な権利であれば必要だと思うが、そのことによってアイヌと和人の対立が起こらないように話し合いが必要だと思う」
  • 「北海道、千島、樺太の主権者はアイヌであり、国家はアイヌと協議の上、施策をおこなうべき」

修正案 アイヌ民族に対する「歴史的不正義」を認定し、国際規範が求める先住権保障を「国の責務」と明記しましょう


関連条文 7・8・10〜19

  • (交付金事業について)「アイヌの意思が無視されている」
  • 「当初から5年の計画を出す必要があり、拙速すぎて、何が必要なのか、どうすればよい伝承ができるかをほとんど議論できなかった」
  • 「関東のアイヌ団体などの意見は尊重されていない」
  • 「アイヌ協会のみで意見交換していた。アイヌはアイヌ協会員のみではない」
  • 「独自の教育課程の取り組みを提唱したが、全く別な計画になった」
  • 「市町村が独自財政で実施できる施策、観光事業に利用されている傾向が強い」
  • 「地域によってはアイヌの意思が尊重されている場合もある」「アイヌ協会に属していないので、どのような経緯で当地区の計画が組まれたのかわからない」

修正案 国や自治体のアイヌ施策にFPIC(エフピック:事前に十分な情報を開示し、自由な選択を保障したうえで、先住民族の同意を得る仕組み)を導入しましょう


関連条文 4・5・6

  • 「推進法がアイヌ差別を禁じた後もマスメディア、ネット、公務員、議員、ネトウヨ等々(の差別発言が)後を絶たない。罰則が必要」
  • 「法律をもって差別禁止すべき」
  • 「まず日本政府が行ってきた強制同化政策を反省し、特に今日なお差別の根源となっているアイヌを旧土人と呼称したことを謝罪することが必要」
  • 「SNSやネットでアイヌ差別。こんなことで私たちの子供や孫が「私はアイヌ民族」と大きな声で話し、生きていけるのだろうか」
  • 「日本人の個々人がまず加害者であることを認識し、当事者意識を持つこと。それには国の責任において、アイヌが辿った歴史を国民に周知徹底するべき」
  • 「差別と対峙するには差別されたと感じた本人を中心に差別した当事者と納得できるまで話し合える場を保障できる支援の仕組みを作ることが大切だと思う。当事者双方がその原因と歴史的背景、今後の在り方を共有できるように支援し、本人の自己確立を促したい」

修正案 実効性あるアイヌ差別禁止規定を設けましょう


関連条文 新規

  • 「アイヌ民族の遺骨を研究用に国策で持ち去った。盗ったものは自らの手であるべき姿にもどし、謝罪することである」
  • 「ガイドラインは、返還の足かせになる。なぜ、盗掘したその当事者が遺骨返還ガイドラインを設けるのか」
  • 「慰霊施設を作ったことで、元々の管理者への責任を無くしてしまっている。あんなものは必要なかった。該当する大学や施設が責任を持って返すべきだ」
  • 「今や遺骨が帰ってきて困る地域もある。それぞれの環境も変わってしまっていることを踏まえて動いていただきたい」「国は受入れ体制を関係自治体に促し補助すべき。アイヌは「土から生まれて、土へ帰る」という死生観がある」
  • 「カラフトアイヌ(エンチウ)の遺骨収集は、盗掘が明らかにもかかわらず、返還の道筋がつけられないまま何年も放置されている」
  • 「北大や日本全国の博物館からウポポイ慰霊施設の鉄のカベに押しこまれた人骨は、また日本人の人類学者によってDNAやいろいろな調査が始まると懸念している」

修正案 不当に墳墓から持ち出されたアイヌ民族の遺骨返還を「国の責務」と明記し、早期実現を図りましょう


アイヌ施策推進法見直しに向けて(提言)

 

アイヌ政策検討市民会議

代表 ジェフリー・ゲーマン

〒060-0061 札幌市中央区南1条西5丁目愛生舘ビル5F

さっぽろ自由学校「遊」気付 

TEL 011-252-6752 FAX 011-252-6751

 syu@sapporoyu.org https://ainupolicy.jimdofree.com/

 

 国会議員の皆さまにおかれましては、法律の立案・ご議論・制定をはじめ、国民に対する日々のご尽力に敬意を表します。

 

 私たち、アイヌ政策検討市民会議(代表:ジェフリー・ゲーマン北海道大学教授、以下、「市民会議」と表記させていただきます)は、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法、2019(令和元)年5月24日施行、以下、「推進法」と表記します)の施行から5年後に当たる2024(令和6)年の法律見直しに向けて、修正提言をこのたびまとめました。

 

 私たちの案を修正に生かしていただきたい、という主旨ではありますが、最初に、私たちのこの法律に対する基本的なスタンスを申し述べさせていただきます。私たち市民会議は、この法律を「良し」として全面的に受け入れているわけではありません。むしろ、できうることなら廃止とし、一からあらためて作り直してもらいたいと考えております。今が見直しの時期に当たるということで、後段で修正案を提案させていただきますが、私たちが真に望んでいる先住民族政策とその理由づけをまずはご理解いただいたうえで、後段の修正案を吟味していただけたらと願う次第です。

 

 私たちが推進法の中で受け入れがたい、あるいは欠如していると考えているその部分と理由を以下、かいつまんで列挙させていただきます。

 

  1. 推進法は、アイヌ民族を日本の先住民族であると法律で明記したにもかかわらず、先住民族であることに伴う権利が一つも盛り込まれていないこと。
  2. 推進法は、アイヌ民族を文化振興計画や地域振興計画立案の主体とは位置づけておらず、あくまで市町村の意向と計画に基づいて財政投下の措置が行われる仕組みになっていること。
  3. 推進法は、アイヌ民族への事前相談・協議も条約締結もなく行った北海道の日本国編入やアイヌ民族への同化政策といった明治期以来の歴史的不正義を明示しておらず、その反省に立ったものにはなっていないこと。
  4. 推進法が、2007年の「先住民族の権利に関する国連宣言」や国際人権法である「自由権規約」など国際法や国際的な先住民族・少数民族復権の流れを汲んでいないこと。
  5. 推進法が、第1条で「アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができ、及びその誇りが尊重される社会の実現を図」るとうたい、第4条で「何人も、アイヌの人々に対して、アイヌであることを理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」と求めつつも、罰則を欠いていることから、差別の横行を許し、歯止めとしては十分機能していないこと。
  6. 推進法は、人種差別主義に根ざした和人大学研究者らによって不当にアイヌ墳墓から持ち出された遺骨の返還に一切触れておらず、国際社会の潮流である先住民族への遺骨返還が日本国内ではほとんど進んでいない現状を打開する責務を果たしていないこと。

 

 少し詳しく説明させていただきます。

 

 推進法は、日本の法律で初めて、アイヌ民族を日本の先住民族と明記しました。このこと自体は評価すべきことと、私たちは考えます。「先住民族」の定義は、国際的に完全に固まってはいないものの、おおむね次のように合意形成がなされています。

 

国家の拡大に伴って、併合・植民地化された地に以前から住んでおり、植民地支配・同化政策のもと、土地や資源、ならびに独自の文化や言葉を国家や多数派民族に奪われた民族を指す。

 

 自分たちが先祖代々暮らしてきた土地や資源、言葉や文化を奪われているわけですから、これは「歴史的な不正義」と言わねばなりません。言葉や文化を奪われたり、差別を受けたことで、教育水準や経済水準が多数派と較べて抑圧され、それが親から子へと世代をまたいだ負の連鎖となって続いてきた——というのが、ほとんどの先住民族の経験してきた歴史的不正義と、その結果です。その不正義はアイヌ民族も免れられませんでした。例えば、北海道が2017(平成29)年度に行ったアイヌ民族の生活実態調査では、把握できた1万3000人の生活保護率は、日本の平均と比較して4ポイント高く、大学進学率は12.5ポイント低いという結果が出ています。

 

 歴史的不正義を踏まえれば、それを是正するための施策や、賠償という観点に立った補償的措置が、法律の基底にあってしかるべきです。ところが、それが推進法には全く抜け落ちています。

 

 北海道ウタリ協会(現・北海道アイヌ協会)が1984年に独自に独力でまとめたアイヌ新法(案)の「本法を制定する理由」には、以下のような記述があり、まさに歴史的不正義の経緯とそこからの脱却を訴えています。やや長くなりますが、該当個所を以下に引用させていただきます。

 

「明治維新によって近代的統一国家への第一歩を踏み出した日本政府は、先住民であるアイヌとの間になんの交渉もなくアイヌモシㇼ全土を持主なき土地として一方的に領土に組み入れ、また、帝政ロシアとの間に千島・樺太交換条約を締結して樺太および北千島のアイヌの安住の地を強制的に棄てさせたのである。

 

 土地も森も海もうばわれ、鹿をとれば密猟、鮭をとれば密漁、薪をとれば盗伐とされ、一方、和人移民が洪水のように流れこみ、すさまじい乱開発が始まり、アイヌ民族はまさに生存そのものを脅かされるにいたった。

 

 アイヌは、給与地にしばられて居住の自由、農業以外の職業を選択する自由をせばめられ、教育においては民族固有の言語もうばわれ、差別と偏見を基調にした「同化」政策によって民族の尊厳はふみにじられた。

 

 戦後の農地改革はいわゆる旧土人給与地にもおよび、さらに農業近代化政策の波は零細貧農のアイヌを四散させ、コタンはつぎつぎと崩壊していった。

 

 いま道内に住むアイヌは数万人、道外では数千人といわれる。その多くは、不当な人種的偏見と差別によって就職の機会均等が保障されず、近代的企業からは閉め出されて、潜在失業者群を形成しており、生活はつねに不安定である。差別は貧困を拡大し、貧困はさらにいっそうの差別を生み、生活環境、子弟の進学状況などでも格差をひろげているのが現状である」

 

 ここで言う「アイヌモシㇼ」とは、アイヌ民族が先住していた北海道や樺太、千島列島を指します。そして崩壊していった「コタン」とは、日本語では「集落」とか「村落」といった言葉が当てはまります。個々人だけでなく、集落全体が崩壊し、離散する憂き目に遭ったということを端的に訴えているのです。

 

 政府の「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」が2009(平成21)年にまとめた報告書も「明治に入ってから、和人が大規模に北海道へ移住し、近代国家形成過程の土地、同化政策によってアイヌの文化は深刻な打撃を受け、貧窮を余儀なくされた。道内居住者の生活状況や進学率は改善されてきたが、道民や国民全体との格差は残っている。道外の状況は十分に把握されておらず、生活向上関連施策もない」と、踏み込み不足は否めないものの、アイヌ民族に対する日本の「歴史的不正義」に言及しております。

 

 にもかかわらず、現行の推進法は、アイヌ民族に対する歴史的不正義にいっさい触れず、国家による謝罪や賠償をうながすこともしていません。推進法施行後、「アイヌ利権」なるヘイトスピーチが横行しているのはそのせいです。これが、私たちがこの法律を「良し」とできない大きな理由です。


 

 こうした植民地主義や同化政策を重く受け止め、世界の先住民族が暮らしや文化を立て直し、差別なき社会をつくっていくために国連が2007年に総会で採択したのが、「先住民族の権利に関する国連宣言(以下、「国連権利宣言」と表記します)」です。先住民族にはすべての人権や自由を享受する権利があって、伝統的に利用・所有してきた土地や資源に対する権利を有しているとうたっており、日本政府も賛成し、採択を後押ししました。先に述べたように、先住民族は、歴史的に、土地や資源、言葉や文化を国家や多数派民族に奪われてきました。その奪われた土地や資源を回復し、再びその手にする権利などが先住権と端的に表現され、先住民族である以上は世界のあらゆる国、地域の人々であっても、先住権を持っており、権利を回復できるというのが、国連権利宣言の主旨なのです。先住民族の権利回復は、先住民族ではない国民にも必ず利益・幸福をもたらすでしょう。

 

 ところが、この先住権が推進法には盛り込まれていません。ですから、私たち市民会議は、国連の意志や国際社会の求めに背を向け、先住権を盛り込むことをしなかった推進法には納得できず、今後の見直しで抜け落ちた先住権が明記されることを求めている次第です。

 

 世界人権宣言の内容を基礎として、これを条約化した国際人権規約の「自由権規約」の内容・精神も、日本は人権規約を批准しながら、推進法には反映させていないという矛盾を抱えた状態になっています。とりわけ重要とされる自由権規約は「民族的または種族的・宗教的・言語的マイノリティ(少数者)の人々は、自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰かつ実践し又は自己の言語を使用する権利を享有する」(第27条)とうたっています。

 

 一例を挙げますと、伝統的にアイヌ民族が行ってきながら、明治期に全面禁止された川でのサケ漁の復活も、先住権や文化享有権の認定、伝統的漁業権の確認という点で、権利保障の一環と言えます。アイヌ民族は明治以来、1尾のサケも川で獲ることは認められてきませんでした。

1980年代にようやく内水面漁業調整規則の特別採捕の枠組みで、伝統儀式や文化伝承のための採捕が認められましたが、暮らしや生存のためのサケ漁、ひいては江戸時代に盛んに行われていた交易に比する商業漁業権に関してはいまだ一切認められてはいないのが現状です。

 

 このことに対し、たとえば2023年夏に日本を訪問調査した「国連ビジネスと人権の作業部会」は、最終日にこう提言して日本を後にしました。

 

「先住民族の権利に関する国連宣言」に定めるとおり、アイヌの人々の権利を守るうえで、政府と企業がFPIC※を確保することは不可欠です。私たちは政府に対し、土地と天然資源に対するものを含め、アイヌの集団的権利を認めるよう強く促します。(※エフピック:事前に十分な情報を開示し、自由な選択を保障したうえで、先住民族の同意を得る仕組み)

 

 また、2022年の「中央ロー・ジャーナル」第19巻第3号で、国際人権法の権威、小坂田裕子・中央大学教授が「自由権規約に基づくアイヌ民族のサケ漁業権」と題して、「自由権規約第1条及び第27条に基づき,アイヌ民族の商業的サケ漁業権は,個人の権利の集団的行使に加えて,集団の権利としても保障される」と、アイヌ民族は生活や生存のためのサケ漁の権利ばかりか、商業的サケ漁業権も有するとの結論を、日本も批准している自由権規約から導き出しております。

 

 推進法が、第1条や第4条でアイヌ民族が誇りを持って生活できる社会の実現とともに、差別してはならないという理念を掲げたことは評価できますが、現実には差別は解消されておらず、政治家の差別発言に抗議したアイヌ民族の個人が逆にネット空間などでヘイトスピーチの被害に遭う事態まで見受けられます。差別は精神的、社会的に相手を傷つける行為で、当然に罰せられるべきものです。せっかくの条文を実効力のあるものとするために、罰則規定は必要と考えます。

 

 次に遺骨に関してですが、19世紀から20世紀にかけて、国内外の研究者が、アイヌ民族のルーツ、系統などを調べるとの理由づけで、北海道や樺太、千島列島のアイヌ墳墓を発掘し、1600体を超える多数の遺骨を持ち出したことは歴史的事実として確定しております。一部の遺骨は訴訟や国の返還手続きを経て持ち出された地域に返還され、再埋葬されましたが、大学や博物館に保管されていた遺骨の多くが今なお、地域のアイヌ民族に返還されることなく国立民族共生象徴空間(通称・ウポポイ)の慰霊施設に収容されたままになっております。

 

 最も多数の遺骨を収集した北海道大学に限っていえば、調査報告書で「遺骨の発掘・持ち出しは現地当局、つまり警察署や自治体、首長といった和人関係者に対する了解手続きを得て行われており、違法性は認められない」との立場を貫いていますが、当事者であるはずのアイヌ民族の類縁者全員への事前承諾はなかったことが、さまざまな証言から明らかになっています。アイヌ民族の側にしてみれば「盗掘された」と感じるのは当然で、人道的見地からも許される行為ではなかったことは明らかです。持ち出された遺骨の当事者への返還は、国連権利宣言でも求められている重要事項でありながら、推進法には遺骨収集の歴史的経緯やそれに対する反省、さらには返還の責務・義務に関して何も触れられてはおりません。

 

 遺骨の返還も重要なアイヌ施策であり、法律がアイヌ施策推進法と位置づけられている以上、遺骨の問題が抜け落ちていることを私たちは看過できません。例えば、米国は1990(平成2)年に連邦法「先住民墳墓保護返還法(The Native American Graves Protection and Repatriation Act 略称:NAGPRA)」を制定し、個別の法のもとで大学、博物館などが保管する遺骨の返還を進めています。

 

 以上、推進法が、歴史的不正義の認識を欠いていること、アイヌ民族の先住権を盛り込んでいないこと、国連権利宣言や国際的な規約を汲んで、その精神に沿った内容にはなっていないこと、差別に対する罰則を欠き、実効性が弱いこと、遺骨の返還が無視されていることを述べました。

 

 もうひとつ、推進法がその利益を保護する対象としているのはいったい誰なのか、という点にも疑問を呈したいと思います。

 

 推進法の枠組みは、市町村がアイヌ文化振興や地域振興に向けた計画を立案し、その是非を内閣総理大臣が吟味する形になっております。自治体の中にはアイヌ民族の関係団体や個々人の意向を聴き、計画に反映しているところもあるとは思いますが、法の枠組み自体、発案者、立案者は市町村ということになっており、法律そのものに、アイヌ民族が主体的にかかわったり、アイヌ民族が主導するような枠組みは設定されておりません。

 

 私たち市民会議は、地域のアイヌ民族の声に耳を傾けるだけでなく、地域のアイヌ民族が主体者となって文化振興計画や地域振興計画をつくっていく枠組みこそが必要であると考えております。その点で、1984年に当時の北海道ウタリ協会が採択したアイヌ新法(案)にありました「自立化基金」のような、アイヌ民族が自分たちのために管理・運営できる基金の創設がまずは必要ではないでしょうか。同時に、法律の構造を「アイヌ民族を主体とする計画立案」に軌道修正していくべきだと考えます。

 

 繰り返しになりますが、私たちが推進法に対して抱いている不足感、すなわち改善を求めたい点は、

 

  1. アイヌ民族を日本の先住民族であると法律で明記しているにもかかわらず、先住民族であることに伴う権利が一つも盛り込まれていないこと。
  2. アイヌ民族が文化振興計画や地域振興計画立案の主体とはされておらず、あくまで市町村の意向と計画に基づいて財政投下の措置が行われる仕組みになっていること。
  3. アイヌ民族への同化政策をはじめとする明治期以来の歴史的不正義を明示し、その反省に立ったものにはなっていないこと。
  4. 2007年の「先住民族の権利に関する国連宣言」や国連の「自由権規約」など国際法や国際的な流れに沿った法律になっていないこと。
  5. 差別禁止をうたいながら、罰則規定を欠くこと。
  6. 不当に墳墓から持ち出されたアイヌ民族の遺骨返還に向けた責務・義務に触れられていないこと。

 

——の大きく6点です。

 

 この認識にもとづき、以下、具体的な修正案を提言いたします。ぜひ前向きにご検討いただきますよう、ご期待申し上げます。


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アイヌ施策推進法見直しに向けて(提言)
minaoshi_teigen20240421.pdf
PDFファイル 547.8 KB

アイヌの声を国会に! アイヌ施策推進法の「作り直し」を求める国会院内集会@東京

 

日時 2024年5月15日(水)13:30~15:00

会場 衆議院第一議員会館・第5会議室

東京都千代田区永田町2丁目2-1 地下1階

主催 アイヌ政策検討市民会議

協力 少数民族懇談会